◆ 西洋医学との違い
西洋医学では、病名診断の上に治療が成り立つことが多いのですが、漢方医学では、病気を起こしている個人の生体反応を体質ごとに分け、「証(しょう)」として捉えます。
陰陽と虚実
漢方治療の根幹をなす重要な基礎概念に「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」があります。
簡単に捉えれば「陰証(いんしょう)」は体が冷えた状態、寒がりの状態です。
「陽証(ようしょう)」は体が熱を持った状態、暑がりの状態です。「虚証(きょしょう)」は体力が不足した状態、抗病力が少ない状況です。
「実証(じっしょう)」は体力が充実し抗病力が過剰な状態です。
その他にも、寒熱、気血水(きけつすい)、五臓などの概念を駆使して漢方では治療にあたります。
消化管の重要な役割
紀元前1-2世紀の古代中国で著された「黄帝内系(こうていだいけい)」という医学書によれば、消化管は「倉廩(そうりん)」の管」と呼ばれ、口から入った飲食物を消化吸収し、五臓六腑に栄養分を分配し、その精気『後天の気(こうてんのき)』を養う機能を担っているとされます。
(ちなみに親から受け継いだ『先天の気(せんてんのき)』は腎(じん)に宿ります)
この考えに従えば、消化管機能が低下した人は様々な消化器系の不調だけでなく、心(こころ)も含めた全身的な不調を併発しやすいということになります。
漢方で重視する消化機能
漢方では、このように全身状態との関連に消化機能を重視する考え方があります。
中国の金元時代に活躍した李東垣(りとうえん)は、その著述「脾胃論(ひいろん)の中で、あらゆる病は脾胃の衰えに由来すると述べています。
人が生命活動を行ってゆく上で、必要不可欠な「気」の中でも大切な水穀の気(すいこくのき)は、消化管から吸収され全身に巡らされます。
消化機能が低下すると、「気」を十分に取り込めず、全身に気が廻らないので、「気虚(ききょ)」という状態に陥ることがあります。
消化管自体の活動が低下した状態を「脾虚(ひきょ)」という場合もあります。このような状態では元気や気力がなく疲れやすい、だるい、寝汗をかくなどの症状が表れやすくなります。
気
「気」は、気・血・水(きけつすい)の巡りの重要な働きをしているので、様々な面に影響を及ぼします。
例えば「血(けつ)」は、単なる血液のみならず、皮膚の潤いや髪の毛などにも関係してきます。「水(すい)」は気によって体の中を絶えず巡っている状態が理想的で、気虚によって水(すい)が鬱滞したり局在すると、「水毒(すいどく)」という水分代謝異常などにつながります。
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